祝いの行事にまつわる食材の由来と意味 —ハマグリの汁—
先日婚礼に招待され、お祝いの食事をいただきました。その中で、殻や身を取り除いた汁だけが器に入ったハマグリの汁が提供されました。とても美味しくいただきましたが、なぜ汁だけなのか不思議に思い、その由来と意味を調べてみました。
ハマグリは、雛祭りでも「貝合わせの遊び」に使われることで知られています。対の貝殻としかぴったり合わないことから、夫婦和合や良縁を象徴するため、縁起物として扱われてきました。(以前のコラムでもご紹介しました)
また、婚礼の席でも二枚貝が「唯一無二の存在として結ばれる」ことを象徴し、新郎新婦の調和や夫婦の誠実さを祈る意味が込められています。古くからハマグリは海の恵みを象徴し、夫婦の末永い繁栄を願う食材ともされています。吸い物として提供することで、清らかで純粋な夫婦生活への祈りも表現してきたようです。
ところで、ハマグリをひな祭りや婚礼で用いる習慣は、主に関東のようです。
江戸時代の武家社会における婚礼文化の影響で、関東では特に一対を象徴するものとしてハマグリが重んじられ、婚礼の献立にハマグリの吸い物を含めるのが格式のあるものとされてきたようです。
(関西では、ハマグリよりも鯛や昆布などが婚礼の献立に用いられることが多いようです。)
近年では婚礼などの行事のスタイルが多様化していますが、伝統的な食材の由来と意味を知ることで、より一層の感慨と味わいを得られるのではないでしょうか。